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フリーランスとの業務委託契約について注意すべきポイント
近年、企業とフリーランスとの間で締結される業務委託契約が増加しています。
しかし、雇用契約とは異なるこの契約形態には、誤解やトラブルのもとになる落とし穴がいくつかあります。
本記事では、フリーランスとの業務委託契約について注意すべきポイントについて解説します。
業務委託契約とは?
業務委託契約とは、企業や組織が行っている業務の一部分を、外部の企業や個人に委託するときに結ぶ契約のことです。
一般的な雇用契約とは異なり、業務の進め方や時間は委託された側が自由に取り決め、労働力に対してではなく、成果物や業務に費やした時間などに対して報酬が支払われます。
雇用契約については労働基準法等各種の規制がありますが、フリーランスとの業務委託契約について規制は限定的です。
とはいえ、それは力関係が対等(あるいは雇用に比して対等に近い)という前提がありますが、実際はクライアント側の力の方が強いのが一般的でしょう。
そして、クライアント側がフリーランス側の業務の進め方や時間について制約を及ぼすことがよくありますが、行き過ぎると、契約名は業務委託契約であるけれども、もはや実態は業務委託契約ではなく雇用契約だとして各種労働法規制の適用を受けたり、その他下請法や不正競争防止法の適用を受けたりすることもありえます。
まずは、フリーランスは従業員ではなく一個の独立した経済主体であること、雇用と業務委託の違いを認識することが必要です。
フリーランスと業務委託契約を結ぶ際の注意点
フリーランスと業務委託契約を結ぶときの注意点は、以下の通りです。
以下は、委託者側の視点から説明していますが、フリーランス側の視点は、以下の裏返しであり、重複してきます。
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)
フリーランスとの契約については、特定受託事業者にかかる取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法と通称されます)の適用の有無を検討することが最も重要です。
以下フリーランス保護法の概要を説明します。なお以下は,本稿執筆日である令和7年8月時点の法律の定めに基づく記載です。
個人であって従業員を使用しない者や、法人であっても代表者以外に役員や従業員がいない者を特定受託事業者すなわちフリーランスとし、当該フリーランスに対し、物品の製造・情報成果物の作成の委託をしたり、役務の提供の委託をしたりするとフリーランス保護法が適用されます。フリーランス保護法が適用される場合、クライアントに対して、
・業務委託の内容、報酬の額、支払期日等について、書面あるいは電磁的方法によってフリーランスに明示する義務
・報酬支払期日については、成果物を受領した日あるいは役務の提供を受けた日から60日以内と定める義務
・理由のないフリーランスの給付の受領拒絶、報酬減額といった不利益な措置の禁止
・フリーランスの妊娠・出産・育児・介護に対する配慮義務
・フリーランスに対するセクシャルハラスメントやパワーハラスメントに対し、適切に対応するための必要な体制整備等の義務
といったものが課されることになります。
具体的な対応方法や体制整備等については弁護士にご相談ください。
業務内容と範囲の明確化
トラブルの多くは、業務範囲のあいまいさに起因します。
「デザイン一式」や「業務サポート」などの抽象的な表現ではなく、具体的な作業内容と成果物の仕様、納期、納品形式を明記する必要があります。
納期遅れに対する対応も明示しておく必要があります。
そして、どのような業務内容に対してどのような報酬が発生するのか、紐づけも明確である必要があります。
この点、言うは易しですが、イメージを正確に文言化するのはなかなか難しいところですから専門家にご相談ください。
また、業務範囲外の依頼があった場合の対応や追加費用についても取り決めておくと安心です。
報酬と支払い条件
報酬の金額だけでなく、支払時期や支払方法、遅延時の対応も契約書に盛り込むことが重要です。
支払時期は業務着手時、完了時、数回に分けて支払うパターンなども考えられます。
また、成果物の検収方法も踏まえて記載することで、後のトラブルを防げます。
知的財産権の帰属
納品された成果物に関して、著作権や使用権がどちらに帰属するか必ず明記します。
通常、クライアント側が著作権の譲渡を求める場合が多いですが、その場合にはフリーランス側が著作人格権を行使しない旨も記載することが一般的です。
契約解除・損害賠償の取り決め
やむを得ず契約を中途解約する場合に備え、解除の条件や違約金、損害賠償の範囲を事前に定めておくことも重要です。
もっとも、実際に中途解約するとなると、クライアントに損害賠償義務が生じることがあり得ますので、慎重な判断が必要になります。
まとめ
業務委託契約は、自由度が高い一方で、当事者間の認識のずれや法的リスクの可能性もあります。
双方の信頼関係を維持し、公平な契約関係を築くためにも、契約書は必ず書面で作成すべきで、その内容にも注意しなければいけません。
当事務所では、クライアント側からもフリーランス側からも、契約書面についての相談を受け付けております。
当然のことながら、トラブルになってから契約書面を改めて取り交わすことはできません。
しかし、なんとなく取り交わした契約書面で争いになることが多々あります。
契約締結段階から、トラブル予防のためにご相談いただければ幸いです。
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弁護士里村 格(さとむら いたる)
大阪の東天満の里村総合法律事務所に所属する弁護士です。
誠実・丁寧・公正を心掛けて,ご依頼者様にとって有益で納得できる解決を目指します。
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- 所属団体
- 大阪弁護士会
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- 経歴
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2010年 京都大学法学部 卒業
2012年 京都大学法科大学院 卒業
2014年 弁護士登録(大阪弁護士会)
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- 執筆・監修
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